Action YCC | 教育の現場
託された信頼、自律する組織。
野本新監督の「哲学」と、猪飼主将の「実践」。
今、商大野球部の新たな挑戦が始まる。
大学での学びは、教室の中だけに留まるものではありません。
記事企画「Action YCC | 教育の現場」では、学生と教員が共に学び教え合い、知性と人間性を磨き続ける「実践の最前線」にフォーカスし、日々刻まれる成長の足跡をご紹介します。
今回スポットを当てるのは、新たな一歩を踏み出した硬式野球部。
指揮を執るのは、卒業生としての強い使命感を胸に帰ってきた野本健二監督(2011年商学科卒)です 。単なる勝敗の追求を超え、建学の精神である「安んじて事を托さるる人」の育成を掲げる野本監督 。学生たちに自ら考え判断する「裁量」と「権限」を与え、AI時代にも通用する自律した人材を育てるという、その独自の教育哲学を伺いました。
そして、その教えをグラウンドで体現するのが、全部員による投票という異例の形で主将に選出された猪飼主将です 。監督が掲げる「リスペクト」や「先を読む力」をいかにチームに浸透させ、100名を超える大所帯を一つの方向へ導いていくのか。「対話」と「信頼」が生み出す、新しい組織の形。勝利の先にある「人間形成」という真の目的を目指して、泥臭く進化を続ける彼らの「教育の現場」をご覧ください。
野本 健二さん
横浜商科大学硬式野球部監督/商学部商学科2011年卒業生野本 健二さん
横浜商科大学硬式野球部監督/商学部商学科2011年卒業生現役時代は硬式野球部の中心選手として、外野を駆け巡る活躍を見せました。卒業後は一般企業での社会人経験を経て母校のコーチに就任。長年現場で選手を支え続け、2025年12月、新監督に就任しました。これまでの伝統を重んじつつも、学生たちが社会で生き抜く力を養えるよう「野球を通じた人間形成」を掲げる。母校への深い愛情を胸に、学生一人ひとりの自律を促す新たなチームづくりに情熱を注いでいます。
猪飼 一斗さん
横浜商科大学硬式野球部主将/商学部商学科4年次生猪飼 一斗さん
横浜商科大学硬式野球部主将/商学部商学科4年次生静岡県の高校野球を象徴する名門・静岡商業高校の出身。高校時代から卓越したリーダーシップを発揮し、主将として伝統あるチームを牽引してきました。 高校、そして大学と、続けて大役を任されてきた経験豊かなリーダーです。これまでの伝統を尊重しながらも、選手一人ひとりの声に真摯に耳を傾ける「対話型」のスタイルで、新体制のチームを丁寧にまとめ上げています。
横浜商科大学硬式野球部・野本新監督に聞く
「安んじて事を托さるる人」の育成と、応援されるチームへの変革
◆新監督としての抱負 - 卒業生として、指導者として
コーチから監督に就任され、改めてどのようなチームづくりを目指されていますか?
野本監督: 私は新監督というより、まずは横浜商科大学の卒業生として、一人の先輩として学生に何を残せるかを一番に考えています。「監督」という肩書きが独り歩きしないよう、地に足をつけた指導を心がけています。
根本にあるのは、代々続く「野球を通じた人間力の形成」です。特に建学の精神にある「安んじて事を託さるる人」を育成することを最大の目的としています。 神奈川での優勝や神宮大会出場という目標は、その目的を達成するためのプロセスだと捉えています。
◆新チームになって取り組んでいること - 対話と自律
新体制となり、練習やチーム運営で新たに取り組まれていることはありますか?
野本監督: 練習時間や内容など、技術的なレベルアップのための仕組みは大きく変えました。最も重視しているのは「コミュニケーションの量」です。 例えば、主将の選出も監督の指名ではなく、部員全員による投票で行いました。監督が指示を出すだけのトップダウンではなく、学生が自ら考え、判断する「時間的な余裕や裁量」と「権限」を与えるようにしています。AI時代において、指示を待つだけの「イエスマン」ではなく、自分の意見を持って行動できる人材を育てたいと考えています。

◆監督として取り組んでいること - 哲学の共有とインプット
監督自身が、学生たちの意識改革のために行っていることは何でしょうか?
野本監督: チームの「哲学書(フィロソフィー)」をつくりました。そして学生一人ひとりに手渡しました。そこには「地域に貢献し、皆様に勇気と感動を与え、感謝を伝えられる野球部を目指す」という指針を記しています。
また、私自身も多くの本を読み、先人の考え方を学んでいます。先日は151連勝していた米国の高校アメフトチームが、挫折から這い上がる映画を選手たちに見てもらいました。感想文を提出させることはしませんでした。心の底から「なぜ自分たちは野球をやるのか」ということを感じ取ってほしいと思っています。


◆選手たちに対して心掛けていること - リスペクトと多角的な視点
選手と接する際、特に大切にしているキーワードはありますか?
野本監督: 「リスペクト(敬意)」です。 相手チームや審判への敬意はもちろん、私自身も選手たちを最大限リスペクトしています。150キロの球を投げる、打つという彼らの能力は本当に素晴らしい。 また、野球を「手段」として捉え、広い視野を持ってほしいと思っています。 試合で相手の弱点を突くのは勝負として必要ですが、それは相手を卑下するためではありません。 相手がいるからこそ試合ができるという感謝の気持ちを忘れないようにと伝えています。
◆4月からのリーグ戦に向けた意気込み
いよいよシーズンが始まります。応援してくれる方々へのメッセージをお願いします。
野本監督: 今年のチームには、突出した選手がいるわけではありません。だからこそ、一人ひとりが「自分がやらなければ」という自覚を持っています。この冬で大きく成長した投手などの新戦力にも期待してください。私たちが目指すのは「自然と応援したくなる野球部」です。グラウンドでのハツラツとした姿、にこやかな挨拶、そして泥臭く勝利をもぎ取りに行く姿勢。ぜひ一度グラウンドに足を運んでいただき、学生たちが挑戦している姿を見ていただければ幸いです。
横浜商科大学硬式野球部・猪飼主将く
「一人の自律」がチームを動かす。投票で選ばれたリーダーの決意
◆新キャプテンとしての抱負 - 全員の想いを背負って
今回、全部員による投票で主将に選ばれました。就任にあたっての率直な心境を聞かせてください。
猪飼主将: 自分自身、最初は「主将をやりたい」と立候補したわけではありませんでした。しかし、仲間たちが票を投じてくれたという事実は、それだけ信頼されているということだと重く受け止めています。
野本監督からは「お前のチームなんだから好きにやっていい」と言われています。OBの方々が築いてきた伝統を大切にしながらも、今の自分たちにしかできない新しいチームの形をつくっていきたいです。
◆新チームになって取り組んでいること - 対話と意識の共有
チームが始動して数ヶ月、具体的に変化を感じている部分はどこですか?
猪飼主将:一番変わったのは、選手同士の会話の質と量です。これまでは指導者からの指示を待つ傾向がありましたが、今は「自分たちでどうしたいか」を話し合う場面が増えました。練習メニューについても、ただこなすのではなく、その意図を理解し、必要であれば選手側から提案や確認を行うようにしています。監督が「考える時間」をくださっているので、その時間をいかに有効に使うかを常に意識しています。

◆主将として取り組んでいること - 橋渡しと個の尊重
100名を超える大所帯をまとめる上で、心がけていることは何でしょうか?
猪飼主将: 監督やコーチと選手の間の「パイプ役」に徹することです。監督が掲げる哲学や方針を噛み砕いて部員に伝え、逆に現場の選手の熱量や意見を監督に届けるようにしています。
また、商大には個性豊かな選手がたくさんいます。一人ひとりが「自分の役割」を自覚し、納得して動けるような環境づくりを意識しています。誰か一人の力に頼るのではなく、全員が主体性を持って動く組織にしたいと考えています。
◆監督から学んでいること -人間力と先を読む力
野本監督の指導を通じて、自身の考え方に変化はありましたか?
猪飼主将: 監督からは、技術以上に「人としてのあり方」を学んでいます。例えば、相手へのリスペクトや、日常の挨拶、周囲への感謝といった「当たり前のこと」の重要性です。
また「先を読む力」についても厳しく、かつ丁寧にご指導いただいています。試合の展開だけでなく、準備の段階からあらゆる状況を想定すること。それが勝負を分けるのだと痛感しています。
◆4月からのリーグ戦に向けた意気込み
いよいよ勝負のシーズンが始まります。最後に意気込みをお願いします。
猪飼主将: 昨年の5位という悔しさを、全員が忘れていません。今年は絶対的なスターはいませんが、その分、結束力と泥臭さではどこにも負けない自信があります。
応援してくださる方々に「商大の野球は面白い」「応援してよかった」と思っていただけるような、熱いプレーをお見せします。リーグ優勝、そして神宮の舞台を目指して、一戦必勝で戦い抜きます。
PICK UP
2026(令和8)年度 神奈川大学野球春季リーグ戦
4月4日(土)10:00 開幕!
《 横浜商科大学 対 神奈川大学 》
球場:関東学院大学ギオンパーク
いよいよ春季リーグ戦が幕を開けます。
野本新監督のもと、自律と対話を重んじ、一歩ずつ積み上げてきた新生・横浜商科大学。
泥臭く、ひたむきに勝利を追い求める選手たちの姿は、見る者の胸を熱くさせるはずです。
私たちの戦いには、スタンドからの皆様の声援が欠かせません。
4月4日、ギオンパークを商大カラーに染め、共に勝利の瞬間を分かち合いましょう!