Beyond YCC - 学びの向こう側
学び合える環境が力になる。
商大で見つけた、国税専門官への道
大学での学びは、その先にどのような道を拓くのでしょうか。
記事企画「Beyond YCC – 学びの向こう側」では、さまざまな分野で活躍する学生や卒業生にフォーカスし、学びの先に広がる世界をご紹介します。
今回登場いただくのは、国家公務員である国税専門官採用試験に合格した、卒業生の児玉成徳さんと4年次生の青島和輝さん。
国税専門官とは、国民の納税義務を適切に履行させることで、公平な税負担を実現し、国の重要な財源を確保するという非常に公共性が高い役割を担っている「税」のスペシャリストです。
それぞれ異なるきっかけから学びを重ね、大学の環境や支援を活かすことで道を拓いていったと語る二人。決して容易ではない国家試験をどのように乗り越え、志を形にしていったのでしょうか。
児玉 成徳
右:横浜商科大学 商学科 卒業生(2023年度卒)/会計学研究部外部指導員
青島 和輝
左:横浜商科大学 商学科 4年次生/会計学研究部 簿記会計支援室スタッフ
児玉 成徳
右:横浜商科大学 商学科 卒業生(2023年度卒)/会計学研究部外部指導員青島 和輝
左:横浜商科大学 商学科 4年次生/会計学研究部 簿記会計支援室スタッフINDEX
国税専門官という道との出会い
まず、この大学を選んだきっかけを教えてください。
児玉:
商業高校に通っていた頃に会計に興味を持ち、将来は税理士か公認会計士になりたいと考えるようになりました。大学進学にあたっては、その夢の実現に適した環境を探し、いくつか調べる中で、当時横浜商科大学に在籍されていた先生の指導に惹かれて志望しました。
青島:
私は高校一年生のとき、研修でさまざまな企業や大学を見学する機会があり、その際に横浜商科大学の雰囲気にとても魅力を感じたことがきっかけです。
商学や会計のどういったところに興味を持ったのでしょうか?
児玉:
親が会計関連の仕事に就いていたこともあり、身近に感じられたのが大きいと思います。また、資格を取得することで社会で活躍できる幅が広がるのではと感じました。
青島:
私は商学科に入ってから簿記の勉強を始めたのですが、すぐに「自分に合っているな」と感じました。それをきっかけに、将来はこの分野の仕事に就きたいと思うようになりました。
大学での資格勉強はどうでしたか。
児玉: 同じ目標を持つ仲間を見つけられず…ほとんど一人で勉強していたので正直苦労しました。それでも諦めずに学び続け、大学4年生のときに税理士試験の「簿記論」と「財務諸表論」に合格できました。卒業後は税理士を目指していましたが、ある先生から「国税専門官の道はどうか」と勧められ、興味を持ってそちらの道にシフトしたんです。
税理士と国税専門官の違いは何でしょうか?
児玉: どちらも「税金を正しく納めていただくお手伝いをする仕事」という点では同じです。税理士は寄り添う立場で、国税専門官は取り締まる立場という違いはありますが、目指す方向性は変わらないと思います。
青島さんはどういった経緯があったのでしょうか。
青島: 私は当初、公認会計士を目指して一年間勉強していましたが、思うように成果が出ず悩んでいた時期がありました。そんな頃、講義で国税局や税務署の担当官の方からお話を伺う機会があり、国税専門官という職種を知ったんです。現場のリアルな話に強く惹かれ、そこから目標を国税専門官に切り替えることにしました。
お二人とも、先生や職員など専門分野の方からの影響が大きかったんですね。
児玉:
そうですね。単科大学ということもあり、専門分野の方と接する機会がとても多い環境だと思います。授業でも教授との距離が近く、親身にサポートしてくださいました。
青島:
教室自体が比較的小規模で学生の人数も多すぎないため、先生との距離が物理的にも近いんです。先生自ら声をかけてくださることも多く、相談しやすい雰囲気がありますね。
児玉:
学生たちと教授で食事に行くこともあるくらいフランクな関係性なんです。そうした環境だからこそ、さまざまな情報収集ができたと思いますね。
大学を使いこなし、学びを深める
学生生活と資格勉強の両立はどのようにしていましたか?
児玉:
授業の課題は比較的取り組みやすいものが多かったため、資格勉強の時間を十分に確保できました。税理士試験の勉強を本格的に始めた大学3年生の時期は、朝早くに学校に来て夜まで勉強していましたね。
青島:
周りの友人が課題に早く取り組むタイプが多かったので、講義後は学内でその日の課題を一緒に終わらせ、そのまま遊びに出かける生活を送っていました。みんなで協力して3年生の間にほとんどの単位を取り終えたので、早いうちから資格勉強に集中できましたね。
二人とも大学で資格勉強をされていたんですね。
児玉: 空き教室や大学内のカフェテリアを活用していました。空いている教室は自由に使えるので、講義の合間に一人で集中したいときに便利なんです。カフェには大きなテーブルがあり、友達と一緒に勉強するのにも適していますし、夜遅くまで利用できるのでとても助かりました。状況や気分によって集中できる環境が異なったりするので、さまざまな場所を活用できるのはこの大学の良さだと思いますね。
とはいえ、資格勉強はそう簡単なことではありません。多くの努力をされたと思いますが、特に苦労したことは何ですか?
児玉:
自分の場合は、勉強時間を取りすぎてしまったことに反省があります。入学当初から税理士を強く志して、青春は捨てるくらいの尖った考えを持っていたんですが、振り返ると大学時代にしか得られない経験がもっとあったかもしれないなと思います。遊ぶこともそうですし、勉強と学生生活の両方を大事にしてほしいと後輩には伝えたいですね。
青島:
私も公認会計士を目指していた1、2年生の頃は、一人で頑張ることが大事だと思い込んでいました。ただ、一人だとモチベーションを保ちにくいですし、わからないことを気軽に相談できない。それが却ってストレスになってしまっていたので、支え合える友達と一緒にやることは大事だなと思います。
児玉:
誰かに頼れるようになったきっかけは、会計学研究部に入ったことですね。
青島: そうですね。そこで同じ道を目指す学生に出会えたことで環境が大きく変わりました。
会計学研究部とはどういった部活ですか?
児玉:
税理士や公認会計士を目指す学生が集まって、試験に向けた教材や学習環境を提供する部活です。また、会計学研究部の部員が中心となって週に一度「簿記会計支援室」と称した勉強会を開いています。上級生が初級生を教えたり情報交換をしたりと、学年による上下関係はあまりなく、協力しながら学び合うことが特徴ですね。私は元々主将を務めていて、卒業後も外部指導員として関わっています。
青島:
部員は全体で90名近くいますが、一度の勉強会に集まるのは15名ほどです。毎週必ず参加しなければならないわけではなく、行き詰まったときや試験間近で不安があるときなどに、気軽に相談できる拠り所として参加している学生も多いんです。
心強い環境ですね。部員数が多いですが、全員が税理士や公認会計士を目指しているのでしょうか。
児玉: 簿記2級まで取得して就職活動に活かしたいという学生や、簿記の一定資格を取得すると授業単位が免除される制度もあるので、そういった活用を考える学生もいますね。 上級資格を取得しなければ専門職には就くことはできませんが、ある程度の簿記知識でもさまざまな仕事に活かせるのでぜひ参加してほしいです。たとえば、「財務諸表論」は財務情報を読み取る力が身につく科目で、取引先の営業利益率を分析し、最適な営業戦略に結びつけることができるようになります。こうした知識は、社会に出てから学ぶことも多いので、働きながらではなく学生のうちに学んでおくと有利だと思います。
商大では資格取得支援講座も提供していますが、そちらも活用していたのでしょうか。
児玉: 私は資格支援の中では税理士講座を取っていました。最大のメリットは価格が安く、専門学校の約3分の1で受講できること。講座によっては実際に専門学校の講義を受けることもできるので、とてもお得なんです。 部活と講座の大きな違いは、学生主体であるか否かだと思います。会計学研究部の中で私は外部指導員として、少しプレッシャーをかけることもあります(笑) というのも、学生にとって質問することは意外と難しく、資格になかなか合格できない人は「わからないことを質問しない」傾向が高いんです。ただ、質問せず自己流で進めると間違った覚え方に繋がりかねないので、私から学生たちに勉強の状況を聞いて、その人に合った勉強方法を提案するようにしています。こうした距離の近さは、講座にはない強みだと思いますね。
早い段階で間違いに気づけることはとても大事ですね。
児玉:
私自身も周りにどんどん質問するようにしていました。特に税理士から国税専門官に目標をシフトした際、公務員試験の勉強も新たに始める必要があったんです。本来は1年かけて学ぶような内容を短期間で取り組まなければならず、先に勉強していた青島にかなり助けてもらいました。
青島:
私も勉強しながらだったので正直そこまで余裕はなかったのですが(笑)、教えることで自分自身の理解も深まりますし、やっぱり仲間として教えてあげようという気持ちがありました。
児玉:
おかげで無事に合格することができました。彼は頼れる国税専門官になると思います(笑)
学生主体で学び合える環境はとても貴重ですし、お互いに力になると思うので、今の1、2年生にも部活を通してこうした姿勢を受け継いでもらいたいなと思いますね。
国税専門官としてのこれから
環境も後押しして無事に国税専門官に合格されたお二人ですが、これからどういったステップに進むのでしょうか。
児玉: 今後は4月から約3か月間、税務職員として必要な知識、技能等の基礎的な事項を習得する専門官基礎研修を受け、採用された国税局(国税事務所)管内の税務署に配属されます。配属後には約1か月間、専攻税法研修を受講します。 さらに、配属先で働きながら2年間の実務経験を積んだ後、専門官として必要な知識や技能を習得するために、個人課税、資産課税、法人課税及び徴収の各専攻藩に分かれ、約7か月間の専科研修を経て、国税調査官・国税徴収官などに任用されます。
これからも学ぶことが多いのですね。
青島:
そうですね。一般企業と比較すると研修期間が長く見えるかもしれませんが、しっかり知識と経験を積むことができる環境だと思います。
児玉:
会計は本当に幅が広く、試験に合格したもののまだ半分も理解できていないなと感じるほどですが、深め続けることができる面白い分野なので楽しみですね。
この分野を勉強して、視野が広がったと感じることはありますか。
児玉:
会計はあらゆることに繋がっているので、知識の活かし方は多様にあると思います。会社の経営や業務の予算管理、日常生活の家計にも活かせます。あらゆることに繋がっているので、学生のうちに学べて良かったと感じます。
青島:
私は簿記を学んだことで、人に優しくなれたと思います。たとえばお祭りの屋台で「なぜこの値段なのか」と思うことがあっても、原価計算を学んだことによって、土地の利用料や屋台や機材費、運搬費、従業員の人件費など、見えないコストも把握できるようになり、納得できるんです。そうした背景を理解できるようになったことで、社会をより優しく捉えられるようになったと思います。
今後、国税専門官としてさまざまな人と関わる中では、そうした想像力は欠かせない視点になりそうですね。 これからさらに学びを深めながら実務を重ねていきますが、まだまだ多様な道が拓けていると思います。どのようにキャリアを重ねていきたいと思いますか?
児玉:
高校から9年間会計を学んできたので、この道に骨を埋める覚悟はあります。ただ、税理士を目指していた最中に先生の紹介で国税専門官の道に進んだように、多少は周囲の流れに身を任せてもいいのかなと思っています。将来の目標を定めることは大切ですが、一歩一歩をどう進めるかは柔軟に考えた方が前に進みやすいと学びました。培った知識は確かな力になっていると思うので、それを存分に広げて、どんな分野にも臨機応変に活かせるようにしていきたいです。
青島:
学生生活の勉強を通してわかったのは、人に頼ること、頼ってもらえることの大切さです。頼られることで、相手のことを深く考え、どう伝えたらいいかが見えるようになりました。これからは国税専門官としても職場の人、地域の方や企業の方から「この人に任せれば安心だ」と思ってもらえる存在になりたいですし、そのために知識や経験をしっかり積み上げていきたいです。
相手から安心して何かを託される人というのは、商大の建学の精神である「安んじて事を托さるる人となれ」にも繋がりますね。 最後に、後輩にメッセージをお願いします。
児玉:
ある漫画に「遠回りこそが俺の最短の道だった」という言葉がありますが、まさにそうだなと思います。私は税理士を目指す過程で、日商簿記1級や会計士試験の問題に挑戦するなど、さまざまな試験を経験しました。一見遠回りに見えますが、そうした経験の末にいま合格できているので、自分にとってはそれが一番の近道だったと感じます。どんな道をたどったとしても、学んだことは必ず自分の糧になるので、諦めずに努力を続けてほしいですね。
青島:
私自身がそうだったように、同じ道を目指す人は少ないかもしれませんが、仲間がいる場所は必ずあります。会計学研究部だったり講座だったり、商大にはさまざまな学びの機会があるので、ぜひ活用して自分にとって学びやすい環境を見つけてほしいと思います。
PICK UP
学び教え合える環境
●会計学研究会(クラブ活動紹介ページへリンク)
●簿記会計支援室と資格取得支援(資格取得支援(課外講座)のページへリンク)
会計学研究会や簿記会計支援室には、日商簿記検定や税理士資格の取得を目指す学生、あるいは会計・簿記の授業で生じた疑問を解消したい学生など、多くの学生が集い、簿記会計を専門とする教員に加え、経験を積んだ卒業生や学生が指導にあたり、学生同士が教え学び合う、本学の特徴であるアットホームな関係の中で学習が進められています。