2015年3月に鶴見区と本学は「包括連携協定」を締結し、その後、様々な事業で協力しています。その一環として、「鶴見区工業会」が発行する「鶴見区工業会会報」の中で工業会所属企業を紹介する記事を商科大の学生記者が担当しています。
今回は、鶴見区元宮に本社を置く、田村工業株式会社に伺いました。取材を担当したのは、小林地域産業研究所所長、高羽地域産業研究所研究員、学生スタッフ唐(貿易・観光学科4年)です。
【会社の概要、沿革】
田村工業株式会社は、金属の熱処理加工及び、加工後の酸化スケールを取り除き表面仕上げを行うショットブラスト加工の専門工場として1959(昭和34)年に創業。その後、金属製品の曲り矯正加工、塗装加工の設備を新設し、都市ガスの導入、オートチャージシステム、水溶性焼入れ等、新しいシステムが集約した熱処理工場を完成させました。また、各種設備の設計、製作、施工、保全事業強化のため、積極的に同業会社を吸収した結果、現在は神奈川、東京、福島など、全国に11の工場を保有し、稼働しています。
田村社長は、「古い歴史を持つ金属熱処理業界の中では、田村工業は後発部隊という位置づけですが、今は金属熱処理のリーディングカンパニーとして、溶接を必要としない摩擦圧接や、金属表面に強度を付与する表面熱処理など、顧客ニーズに応える技術を提供しています。」とおっしゃいました。
(取材の様子)
【主力事業・・・金属熱処理加工】
田村社長は、金属熱処理加工業界の位置づけと役割について図表を用いながら説明してくださいました。金属熱処理加工を支える産業は、主に鉄鋼を専門に作るメーカーを中心とする川上産業、熱処理をメインにする川中産業、部品を組み立て、完成させるメーカーの川下産業で構成されているそうです。田村工業は川中産業として、鍛造・鋳造・焼結・プレス・切削など加工された鉄鋼部品(素形材)に対し、金属の特性を生かす目的として熱処理加工を行っています。
金属熱処理加工は特殊工程のため、依頼先企業から認定書を発行されないと、加工処理ができないそうです。事務所には、企業から発行された認定書が多数掛かっていました。ISO9001の認証を取得するなど、常に高品質を心がけお客様に満足していただけるように努力されているそうです。
(事務所内に飾られた認定書や感謝状を拝見しました。)
熱処理加工は様々な手法があり、加工手法によって金属の性質が変化するそうです。例えば、熱処理前の粗い組織の金属は、一度加熱し急冷処置する焼入れ加工をすると、鋼の硬さを増大させることができますが、外部からの衝撃に弱い性質を持つ弱点があるそうです。それをもう一度適切な温度に加熱・温度保持する焼戻し加工を行うと、粘り強さが向上します。また、一定温度で加熱後、空気中で十分に冷却する焼ならし加工は、組織の不均一を除去し、軟らかくなるため機械加工に適しているそうです。これ以外に、金属の表面だけ硬くし、内部の軟らかさを残す表面硬化熱処理は、耐摩耗性に強く、トランスミッションギヤ部品に使用されているそうです。
(7基の加熱炉やチャージャーを操作するコントロール室を見学している様子)
(850℃に加熱された金属製品をチャージャーで搬送されているところ)
金属の熱処理加工を行った部品は、強度が3倍になり耐久性も優れることから、乗用車やトラック、鉄道、建設機械・産業機械関連部品に使用されています。そのため、田村工業と直接・間接的に取引している企業も、自動車メーカーや鉄道会社、トラック・農業・建設機器の関連会社が多いそうです。TOYOTA、NISSANをはじめ、トラックメーカーのHINO、ISUZU、建設機械のコマツ、農業機械のクボタ、JRグループなども得意先だそうです。また、最近では台湾と中国の鉄道のモーターギアを手掛けたそうです。
(鉄道のレール止金として使用される継目板)
【付帯事業の数々】
田村工業は、同業他社との差別化を図るため、金属に関連する付帯事業にも力を入れています。その代表的な事業を紹介していただきました。
溶接を必要としない摩擦圧接加工は、主にトラックの変速機に使われている部品に用いられているそうです。田村工業では、異なる3つの部品を一度に接合する方法を採用し、加工時間の短縮を実現できたそうです。また、空洞化された部品を接合することで、材料の節約やトラックの軽量化に貢献でき、お客様にも好評を得ています。
(摩擦圧接加工についてカットモデルを用いながら説明していただきました。)
金属の熱処理は、通常850度~1,100度の熱により加工されているそうです。加工の行程で金属が曲がったり、歪んだりすることもあります。それを適正に測定し、規格外の製品に対してはその特性を損なわずに矯正する高精度な加工も行っています。また、熱処理によって金属の表面に付着する酸化鉄を取り除き、表面を滑らかに仕上げるショットブラスト加工技術を持っています。その他、金属の塗装や人の目には見えない微細な傷を含めた検査、各種設備のメンテナンスなどのサービスも提供しています。
(熱処理を行った金属と熱処理をしていない金属の引張強度比較試験の様子)
(外見では判別できない熱処理を行った金属と熱処理していない金属)
【人材育成への取り組み】
田村工業では、「品質は工程でつくりこまれる。自分の作業は自分で検査して自分で責任をもつ。」という品質保証基本方針をもとに、品質・安全管理も徹底しています。様々な性質を持っている金属をお客様の要望に合った製品に仕上げるためには、熟練の職人の技術が欠かせません。会社には、資格支援制度を設け、積極的に資格取得を推奨しています。「一級金属熱処理技能士」等の国家資格の保有者も多数在籍しているそうです。また、社員の技能を向上させるため、研修会や勉強会にも参加させています。経済産業省と東京工業大学、東部金属熱処理工業組合が共同で運営するマイスター育成の「中核人材育成事業」に毎年1名の社員を送っています。田村社長はマイスターの一期生だそうです。これによって、社員の責任感や仕事に対する意識が向上し、技能の面でも向上したそうです。
田村工業では、国家資格である「金属熱処理技能士」の神奈川県の認定実技試験会場でもり、社員は主席検定員、検定員、補佐員として活躍し業界の発展にも寄与しています。々受験者が増えており今年は、60名が参加したそうです。
(事務所に飾っている国家資格取得者の数々)
【取材後の感想】
取材後、工場で行われている熱処理加工の前後過程や金属の強度試験などを見学させていただきました。熱処理を行った部品は、優れた強度を持ち、耐摩耗性も強いことがわかりました。工業領域の発展を支えているこの技術が日本の誇りだと感じました。
また、田村社長は仕事に対し、専門的な知識を持ち、自ら技能資格を取得するなど、仕事への姿勢がとても勉強になりました。
(ISO事務局の河辺様、商科大学生記者、田村社長)
★田村工業株式会社
http://www.tamura-kougyo.co.jp/index.html
2015年3月に鶴見区と本学は「包括連携協定」を締結し、その後、様々な事業で協力しています。その一環として、「鶴見区工業会」が発行する「鶴見区工業会会報」の中で工業会所属企業を紹介する記事を商科大の学生記者が担当しています。
今回は、谷川油化興業株式会社に伺いました。取材を担当したのは、小林二三夫地域産業研究所所長、高羽地域産業研究所研究員、学生スタッフ大宮(商学科2年)です。
【会社の概要、沿革】
谷川油化興業株式会社は、戦後間もない1949(昭和24)年、創業者の谷川六良が、駐留米軍に供給するためのブレーキオイルに着目し、東京・鮫洲に谷川油化研究所を発足したことが始まりです。その後、1957(昭和32)年に鶴見区に工場を新設し、1959(昭和34)年に谷川油化興業株式会社を設立。以来、オートケミカル用品のパイオニアとしてオリジナルブランドである「TCL」を主軸に、自動車関連の化成品を中心として開発・製造し、全国の整備工場やカーショップ等へ供給してきました。2014(平成26)年には自動車部品の専門商社であるSPK株式会社グループの傘下となったことで、ますますの事業拡大に務めています。
また、国内だけでなく、中近東や東南アジア・ロシア・中国などの海外シェアも拡大しており、特にロシアでは、近年クーラント(不凍液)の品質の高さによる人気が高まっているそうです。
(左より、取材を受けて下さった中田社長、飯吉取締役、山田技術開発部長、杉岡工場長)
【主力ブランド】
主力ブランドである「TCL」とは、Tanikawa Chemical Laboratory の頭文字をとったもの。ブレーキフルード、クーラント、シャーシ塗装剤、クリーナー、整備用品等、幅広い製品ラインナップで顧客のニーズに応えています。なかでも、売り上げの3割を占めるブレーキフルードは、原料のグリコールやグリコールエテールの蒸留精製からブレーキフルードの一環生産を自社工場内で行っており、安全性の高い製品として顧客から信頼を得ています。多い時には一日に18L缶1000缶が出荷されることもあるそうです。
(主力商品のTCLブレーキフルード)
中田社長は、経営ポリシーとして品質第一を掲げ、技術開発面でも自信を持って提供できる製品を作ることに尽力していると仰っていました。
(取材を受けてくださった中田社長)
また、カスタマイズパーツ部門を持つSPK株式会社グループとなったことをきっかけに、レーシングカーに使用される「TCL ADVANCE」という新たなブランドが生まれました。これまでの実践的な性能重視のJIS規格に準拠したものづくりだけでなく、更なる高品質を目指し、サーキットやスポーツ走行などの過酷な環境下でも高パフォーマンスが可能になる製品の開発、製造を進めていくそうです。
この「TCL ADVANCE」スタートに際し、昨年、富士スピードウェイにおいて、特殊ルールを用いて燃費効率を競う、『86/BRZ Fuji Green Cup』というレースで谷川油化興業が冠スポンサーを務めました。約40チームが参戦した大規模なレースで、谷川油化興業の社名と共に、TCL ADVANCEの認知度の向上も目指しています。
また、金沢区に所有する工場では、溶剤を精製する蒸留事業を営み、各種産業が溶剤をリサイクルして使用することを推進し、資源循環型社会への取組みに貢献しています。
【工場や研究室を見学して】
インタビューの後、併設する工場と倉庫も見学させていただきました。
工場ではブレーキフルードの配合や充填作業を行っていました。OEMメーカーとして、同じブレーキフルードでも顧客の細かなオーダーに応じているそうです。
また、顧客のなかには自衛隊も含まれているそうで、谷川油化興業の製品の安全性の高さを実感しました。
(工場見学の様子)
また、研究室内も案内していただきました。谷川油化興業はJIS認証取得工場であり、ISO9001の認証も取得されておりますので、厳格な品質管理が行われていました。 また、近年増加しているハイブリット車や電気自動車などの次世代自動車に対応した製品の研究を進めているそうです。
(研究室内の様子)
【取材を終えて】
時代と共に車の特徴は変わっていきます。また、一般車とレースカーで求められているものも異なります。今回色々なお話を伺うなかで、そのような様々な顧客のニーズに応えながら安定的な経営を維持していくことはとても大変なことだと改めて実感しました。
そして、谷川油化興業のような老舗企業が、世界にも通用する技術をもって活躍していることは、地元にとってとても価値のあることだと思います。このような素晴らしい企業が地元にもあるということを、もっと多くの人たちに知ってもらいたいと思いました。
(取材を受けて下さった皆様と、商科大記者)
★谷川油化興業株式会社 http://www.tanikawayuka.co.jp/index.html
2015年3月に鶴見区と本学は「包括連携協定」を締結し、その後、様々な事業で協力しています。その一環として、「鶴見区工業会」が発行する「鶴見区工業会会報」の中で工業会所属企業を紹介する記事を商科大の学生記者が担当しています。
今回は、鶴見区駒岡に本社を置く、日東発条株式会社に伺いました。取材を担当したのは、高羽地域産業研究所研究員、学生スタッフ大宮(商学科2年)です。
【会社の沿革、概要】
日東発条株式会社は、1959(昭和34)年に、現在も本社と工場を置く鶴見区駒岡にて創業後、株式会社リコーから協力会社として認定を受け、多くの製品を手掛けることで発展を遂げて来ました。主な事業として、事務機器等に使用される直径5ミリ以下の精密コイルばねを中心とする線細工等の金属製品の製造を行っています。創業以来、無借金を続ける健全経営の会社です。
(取材の様子)
日東発条で作られる製品は、OA機器や日用家電から自動車、航空機等まで、生活のあらゆる場面で様々な用途に使用されています。試作品のオーダーも多く、顧客からの要望に応じて様々な大きさ、形状の製品を手掛けられることが強みです。
(日東発条で手掛ける主要ばね製品)
【中国の2つの工場での事業】
現在、中国の深圳と無錫にグループ会社の工場を所有しており、現地採用の150名程の従業員が働いています。特に1995(平成7)年に設立した深圳の工場は、日本国内の3倍程の売り上げを誇り、グループ全体の売り上げの中心となっているそうです。この2つの工場では、リコーのほか、自動車部品製造業の三井金属アクト株式会社をはじめとする自動車メーカーを主要顧客とし、自動車のドアロックやボンネット、ハッチネット等に使われるバネやコイルを量産しています。
また、日本との人事交流もさかんに行っており、中国で勤続10年を超えた従業員を1年交代で日本に呼び、様々なノウハウを伝授しているそうです。
(取材に応じて下さった森岡常務)
【工場見学を通して】
森岡常務へのインタビュー後、本社に隣接している工場内を見学させていただきました。
工場内にはたくさんの機械が所狭しと配置されており、従業員の方々が調整を重ねながら操作をしていました。大きな機械が正確に素早く動き、様々な形のバネやコイルが生産されている光景にとても感動しました。なかには30年以上使用されているものもあり、オイルや部品の交換によって性能を維持しているそうで、とても大切に使われていると感じました。
(工場見学の様子)
検査室では、顧客からの要望を受け、1ミリにも満たない銅線に1つずつ手作業でマーキング(色付)する作業の様子も拝見しました。また、バネやコイルの在庫は、錆びないように湿度と温度が管理されている部屋で管理されていました。このようなひとつひとつの細やかな対応が、顧客との信頼関係に繋がるのだと感じました。
(試作品の数々)
【取材を通じての感想】
日東発条で手掛けるバネやコイルなどの製品は、普段あまり意識することはありませんが、ドアや家電など身近なところでたくさん使われていることを再認識しました。
今回の取材を通じて、日東発条のように品質への努力や、柔軟な対応を行う「縁の下の力持ち」のような企業があるということを、もっと多くの方に知ってもらいたいと思いました。
(尾上社長、学生記者と森岡常務)
★日東発条株式会社 http://www.nittospring.co.jp/index.html